ローベルト・シューマン Vol. 1
シューマンの管弦楽曲と室内楽曲の4手連弾版のシリーズがスタートした。レコードのない時代にはこれらの楽曲を手軽に楽しむには、4手連弾は有効な手段で、シューマン自身もクララと好んで連弾し、編曲版の楽譜を残そうとした。シューマンが関与したオーセンティックな編曲版を研究者のヨアヒム・ドラーハイムが監修し、7巻のシリーズになる予定である。 第1弾は室内楽の名曲2曲。ドレーゼル編の弦楽四重奏曲第3番は世界初録音。連弾版では楽器による音色の違い(例えばチェロの高音域)は出にくく、対位法的な動きがわかりづらい側面はあるが、和声の変化は明瞭になり、今まで聞こえなかった声部もくっきりと浮かび上がる。クララ編のピアノ五重奏曲は、未出版のブラームスの編曲を参考にしているようだ。両曲ともエッカレ・デュオの真摯な演奏が曲の魅力を存分に引き出している。シューマンのポエジーを新たな角度から見直すのに格好のアルバムだ。